2008年5月
21日
<司法解剖の遺体写真、イラストやCGも活用>
来年5月に始まる裁判員制度で、日本法医学会(理事長・中園一郎長崎大教授)と最高検は、市民から選ばれる裁判員の心理的負担を軽くするため、遺体の写真の代わりにイラストやコンピューターグラフィックス(CG)を使った立証を積極活用する方針を決めた。学会は、司法解剖の結果を裁判員に分かりやすく伝えるため、初めての一般向け法医学用語集の作成にも乗り出した。
事件性が疑われる遺体の死因を究明する司法解剖の結果は鑑定書にまとめられ、裁判の証拠になるが、残酷な遺体や傷の写真も添付される。難解な専門用語が並ぶことも多く、学会と最高検は昨年7月に研究会を作り、司法解剖の結果をいかに裁判員に説明するか協議してきた。
遺体や傷の写真は裁判員にショックを与える恐れもあることから、写真の代わりにイラストを鑑定書に添付したり、鑑定医が法廷で証言する際にCGを使う案が浮上。学会内には、傷ができていく過程を連続イラストで表すアイデアを提案する学者もおり、裁判員が目で見て分かる説明方法が検討されている。
また、学会は今年3月から、裁判員が参考にできる法医学用語集の作成を開始。鑑定書に登場しやすい「死斑」(重力の作用で血液が下がることによって遺体の表面にできる変色)▽「絞頸(こうけい)」(ひも状のものを首にめぐらせ、手などで絞めて圧迫し、窒息させる)といった用語を分かりやすく解説する作業を進めている。
約1500語を盛り込んで来年3月までに完成させ、市販や裁判所への納入も検討している。執筆者の一人の福永龍繁・東京都監察医務院長は「裁判員制度を見据えた用語集だが、一般の方が法医学への理解を深めるためにも有用と考えている」と話している。【伊藤一郎】 (毎日新聞)
●裁判員になったら死体の写真を見ないといけないかもしれないというのは、個人的にけっこう引っかかっていたことなので、イラストやCGを使うというのは嬉しいアイデアです。それにしても、裁判員制度開始にあたって、いろんなことでお金がかかりますね。これで同制度がきちんと機能しなかったら悲惨ですが、まだまだ課題が山積みであるように思います。
法医学用語集というのも興味深いですが、なにしろ裁判員に選ばれる確率はすごく低いですから、市販されても、選ばれたときのために勉強しようという人は少ないでしょうね。でも、候補者名簿に載った人で、裁判員になることに前向きな人なら、勉強するかもしれません。裁判長の質問を受ける際に「勉強してきました!」なんて言えば、けっこう選任される確率が上がったりすることもあるのかもしれません。
裁判員制度開始は2009年5月21日、ちょうど1年後です。
◆この記事に関するご意見は→ご意見投稿フォーム
20日
<ベテラン国選を懲戒 否認事件を「手抜き」>
起訴事実を否認した被告の弁護を受任しながら、検察側の証拠にすべて同意するなどの「手抜き弁護」で被告の権利を損なったとして、大阪弁護士会が竹内勤弁護士(79)を「戒告」の懲戒処分にしていたことが分かった。09年5月から新たに裁判員制度が導入され弁護技術の向上が課題となる中、司法関係者から「弁護士としてあるまじき行為」と非難する声があがっている。
竹内弁護士は、同会の非弁活動取締委員会委員や人権擁護委員会副委員長などの要職を務めたベテラン。同会の議決書などによると、竹内弁護士は05年12月、暴行と傷害罪に問われた男性被告の国選弁護を受任。その約1カ月後に大阪地裁で開かれた初公判で、被告が起訴事実を否認したのに、検察側が裁判所に取り調べるよう請求した証拠すべてに同意した。
裁判官が被告の意見陳述と弁護方針の食い違いに疑念を抱き確認したが、竹内弁護士は何も意見を述べなかった。06年4月の第5回公判で竹内弁護士は被告に解任され、弁護は別の弁護士に引き継がれたが、翌年3月に懲役1年6月(求刑・懲役2年)の実刑判決が言い渡された。
同会は竹内弁護士のこうした行為について「弁護方針の検討や、被告の意見を確認しないまま初公判に臨んだと言わざるを得ない」と手抜き弁護を指摘。さらに検察側の請求証拠にすべて同意した点を「被告の防御権が損なわれた可能性は否定できず、誠実な弁護活動を行わなかった」と判断、5月12日付で「戒告」の懲戒処分にしていた。
竹内弁護士は「40年以上、積極的に国選弁護を引き受けてきた自負はあるが、処分は甘んじて受ける」と話している。竹内弁護士は、女性依頼者に対し着手金の割引きと引き換えに性的関係を求める趣旨で食事に誘ったとして、05年にも業務停止3カ月の懲戒処分を受けている。【川辺康広】 (毎日新聞)
●弁護士に対する懲戒の種類は「戒告」「業務停止(2年以内)」「退会命令」「除名」の4つで、今回の件で竹内弁護士が受けた戒告処分は、反省を求められるだけの最も軽い懲戒処分です。
「手抜き」にあたるかどうかは線引きが難しいところもあるので、慎重に処分を下したのかもしれませんが、被告人にしてみればたまったものではありません。もちろん、きちんと弁護活動していたとしても、異なる判決内容となったかどうかは分かりませんが、もしかしたら執行猶予がつくこともあり得たかもしれません。
否認事件であるだけに、もし冤罪だったらと思うと、ぞっとします。もし起訴の内容通りの罪を犯していたのだとしても、弁護士は被告人の人権が必要以上に侵されることを防ぐために尽力せねばなりません。刑務所に入る期間が1か月違うだけでも、当人にしてみれば大きな違いです。
報酬額の低い国選弁護を積極的に引き受けてきたという竹内弁護士の言葉が本当ならば、もともとは正義感の強い弁護士なのかもしれません。ベテランとなるにつれ、信念が形骸化してしまったというところでしょうか。
それにしても、最後の段落の内容は、とても印象が悪いですね。弁護士は信用の商売ですから、たとえ戒告であったとしても、失うものは意外と大きいのではないでしょうか。
◆この記事に関するご意見は→ご意見投稿フォーム